「スペインでは有名な画家なんですよ。映画になったので観ておきなさい」と、大昔に大学の絵画の教授に言われて、大昔「マルメロの陽光」という映画を観ました。
映画制作から21年…あわわわわわ。
やっと日本で、アントニオ・ロペス展です。
そら、観に行くでしょう、と思って行きました。
正直映画で出てきた制作中の「マルメロの木」の未完作しか知らなければ行くのに迷ったかもしれませんが、チラシになっている「マリアの肖像」や「グラン・ビア」を観たら、「いっとくべきか」と直感がささやいたのです。
私の「観とくか」と「食っとくか」という直感は大抵正しい、と今までの人生でたくさん友人からほめられています。今日も正解でした。
この細やかで丁寧な仕事は、本物をそのサイズで観る以外に味わう方法がないと思います。
1枚の絵に何年もかける。同じ時間帯の朝の光の下で、実際にその風景の前に座して7年とか。
でも作品を観れば、それはカメラが撮った写真ではなく人間が現実の景色を観て、描いたのだと確信できるのです。人間の視界って、こうだな、という感じです。
ロペスさんは色彩の追及にはそれほど興味がないようで、色はあまり派手ではなかったりするのですが、それでも落ち着いた色調の「グラン・ビア」という作品ですら、チラシになってしまうと、本物との色調の違いから、本物のよさがぐっと削られてしまっておりました。
ああ、この道路の色はもっと明るいグレーなんだよ!
こんなに暗くしちゃ、朝のさわやかな光が感じられなくなっちゃうじゃん!
誰だよ、このチラシでいい、と思ったヤツ…。
でも、「絵を撮るのってとても難しい」って、昔カメラマンをしていた友達が言っていたから、仕方ないの?とも思っています。
写実的な絵が好きな人はみんなこぞって観にいかないと!!と思ったのですが、皆様とっくに行ったのでしょうか。
平日の朝イチに行ったので、さほど混んでいませんでしたが、もっと日本で名前が知られている作家なら、Bunkamuraザ・ミュージアムって、もっともっと混んでいる印象です。
単純比較はできませんが、ある種、ワイエスよりもスゴイかも、と思うのですが…。
あ~、でも、一つ不満が。
しばしば無機物のまっすぐであるはずの線をゆがんだままにしておくんですよね、ロペスさん…。
「花を生けたコップと壁」の、壁にある電気のスイッチとかゆがんでいます。
全体的にとても仕事が丁寧なのに、そこだけズレている…。
なんで?まっすぐ引こうよ、線…と私は思ってしまうのです。
ま、1枚に時間をかけまくって、未完で終了、という作品が多い方なので、ゆがんだ線はなおす前に終わりにしちゃった?と思うこともできるのですが…。
でも、ほんの短い線なので、狂っているのが個人的にはとてもイヤです。
や~、しかし、ものすごく精力を使い果たすような仕事をたくさんみせつけられてしまって、こっちもがんばるーーーーーーー!!!って、すごく思いました。
行ってきて、非常によかったです。
やったー。