じゆうちょう。

日記です。観たもの、食べたもの、読んだもの、ほか。

夏目漱石の美術世界展(東京藝術大学美術館)

 id:kabakabatamanegi さんの記事をみて、行きたくなって行ってきちゃいました。6月に。

 

漱石さんの作品の表紙やら挿絵やら、漱石さんが評した美術作品やらが並ぶ中、小説「虞美人草」の中に出てくる虞美人草を描いた屏風(←実在はしない)を藝大の先生がこの企画展のために描いたモノが展示されていたり…(←主にこれがみてみたくて行きました)。

 

「我輩ハ猫デアル」の挿絵、かわええ…おしゃれにかわええ…。

現代の文豪的存在の作家(誰でしょう?)の本もこんだけおしゃれにかわええ絵をつけて売ってくれたらいいのではないかしら?

あ、雑誌にはかわええ絵がついているのかしら…。うーん。

 

漱石さんはかなり腰をすえて美術についてイロイロ語っていたそうですが、「新しく出てきた人達が新しいコトをして古い人達から風あたりが強くて…」的な流れに対して、「新しい事をしようとしてた若手」を認めてあげた、ってエピソードだけで、おお、ちょっといい人?と思ってみたというか、ま、その若手側の人が、自分からみて「いい仕事してたと思う」画家だから余計に、お、漱石さん見る目ある?とかちょっと思ってみたりして…あら、私ってやっぱり上から目線ですね、すみません、漱石さん…。

 

(いや、そもそも美術というか芸術って「創造性」という要素が必要なわけで、だとしたら「新しいこと」は受け入れていく姿勢であることが正しいスタンスだと思うという意味において、漱石さん、正しいんでないかい?と思ったのが強いんですが。)

 

ああ、作家としては多分結構それなりに(あれ?)尊敬していると思うんですけど…

でも、主に幼稚な中高生の頃に何冊か読んで、正直、オトナの三角関係とかちょっとどうでもよい、と思っていたもので…私は漱石さんの本業のすばらしさはわかっておらんダメ人間だと思います。

あ、でも「坊ちゃん」の冒頭と文末の一行は記憶していますよ。あれ?日本人ならあたりまえ?

 

虞美人草はひなげしの花のことである、と id:kabakabatamanegi さんが記事で描いていらっしゃったので、更に調べて、虞美人草=ひなげし=コクリコ=ポピーとわかり、漱石さん=アグネス・チャン=与謝野晶子=モネ、みたいな連想ゲームが自分の中で沸き起こっていったわけですが、この前知識(?)をもって、虞美人草の屏風絵をみたので、鮮やかなポピーの花を見てムダに驚くことがなくてよかったです。

 

「虞美人草」を読んでいた頃のアホな高校生だったワタクシは、もっと地味なビジュアルの花だと思い込んで読んでおりましたのです。

 

展示されていた屏風は、花は色彩鮮やかで動的でありつつも全体的はとても落ち着いていて上品で漱石さんの作品世界とも違和感がない様子。みれてよかったです。

 

虞美人草への誤解を解いた今、改めて「虞美人草」を読み返したい気もしますが、やっぱり人の三角関係にあまり興味はもてないかもしれない…という一抹の不安…。

 

しかし、この美術展で最も度肝を抜かれたのは何といっても終盤のコーナー…漱石さんの絵の数々です。結構大きなものもありました。

 

えーとね…素朴です。

テクニックに走っていない、というか、走るテクニックは持ち合わせていない。

画家に師事して相当絵を習っていて、美術について相当専門的に論じていて、そしてこの素朴な絵を描いて人にみせていたのか~という事実が衝撃でした。バカにしているわけではありません。

 

多分本人も全然テクニックがないというか、プロの足元にも及ばない作品だという判断はついていたと思うのですが、それを認識した上でこの絵をヒトサマに見せて、更にそれでもプロの絵についてあーだこーだ言っていた…

漱石さんて、すごく「いい人」だったのかしら?と思ったとです。

 

自分は全然描けない。でも美術は好きでうーんと語る。で、一所懸命描く練習もする。

下手(あ!言っちゃった!)だけど、だからって隠したりしないで人にちゃんとみせる。

なんか、いい人なんじゃないかと思ったのです。

 

ほら、漱石さんてオクサマが「この人絶対頭おかしいに違いないから脳みそ調べて下さい!」って言ったせいで漱石さんの脳は東大に残ってるんだよ、とか国語の先生が昔言っていたから…漱石さんて相当ヘンな厭なヤツだったのかな?とかいう印象が昔から私の中に根付いてしまっていたのです。

 

でも、漱石さんのひたすら純朴な絵をみたら…この人、いい人な気がする~、そうとしか思えない~という印象になって帰って参りました。

 

思えば中学生の頃は「漱石さん、イギリス行ってノイローゼになっちゃうなんて、かわいそう…」と思いつつ、「繊細で面倒くさそうな人だなー。森鴎外の方が後年間違いまくりだったとされたような医学説(脚気モンダイ)を自信満々にずっと唱えちゃってずうずうしくて能天気で明るそうな人だなー」とか思っていましたが、大人になって考えると、「漱石さん、ノイローゼになっちゃうなんて、きっといろんなことに気を遣えるイイヤツだったのかも」という考えも浮かぶし、「森鴎外…医者としてセンスのないヤツ…ちょっとカッコ悪し…」とも思ってみたり。

いや、そもそも鴎外さんて「舞姫」なんて書いちゃうところが「エリスの人生なんだと思っとるんじゃー!このアホとよたろ~!」というイメージも高校時代あったんでした…。ワシもエリスのように掌上の舞が踊れそうなくらい痩せほそりたいです。

 

美術を論じる人って、ま、学生時代には大学の先生等とは接してたことはあるのですが、最近は極稀にパーティーで会って、乾杯のグラスを握りしめながら(早く飲んで食べたい…とこらえつつ)お話を賜る、的な一方通行な接触が多く、多少、周囲にこれから「論じる側のプロになりたい」と大学に通っている人とか、「いつか論じる本を書きたい」という野望を抱く元画商さんとかくらいしか言葉を交わすことはないのですが…そんな僅かな機会からでも近頃「作家(画家)と評論家の関係について」ちろっとイロイロ(時にモヤモヤ)思ってみたりすることがあり…現在ちょっと気になる存在であったので、そういう意味で漱石さんへの興味がほんのりとわいてきました。

 

でも、ほんのりなので、多分それ以外に差し迫っている「さっさと絵を描け!モンダイ」に押し流されてどっかに行ってしまう予感ですが…。