「ぐふふふ。一番すきなミステリ作家の新刊出てたから買ったんだ~」
デッサン会の片づけを何人かでしていたとき、心を開きまくっている友人に小声で言ったら、ちょっと離れた場所にいた年下のコに
「えーっ。誰ですか~?」と聞かれた。
「えええええっっと…。多分知らないと思うので…。有名じゃないから…」と答えをごまかした。
ちょっとちょっと、なんで答えないんだ?
言いよどむとかほとんどないタイプなのに、自分のそのリアクションにびっくりです。
ついでに、「一番すき」とか言っておきつつ、それを口にできないってどういう心理構造なのだ?
はずかしいの? なにが? オトメゴコロか?
いや、心根の基本を1980年代の少年ジャンプで形成されている私はむしろオトメゴコロは成分不足気味過ぎ。
作家名を口にするのを躊躇した理由を考えてみました。
1、作家名そのものが、ちょっと個性的なのではずかしい。
ああ!やっぱりはずかしいんじゃん!
でも、それはオトメゴコロというより、オトナとしてかもです。
だって有栖川有栖ですよ。どんだけ少女マンガテイストなんだ!?っていうか~。
御本人はすっごく浮ついていない、落ち着いて素敵な大人の男性作家なんですけど…
なんでこのペンネームなんでしょう。
作品は非常に堅実な本格系のミステリが主なのに…。
いや、でもだからって今更ペンネーム変えたりしなくていいし、されたらイヤですけども。
2.ちょっとマイナーだから
このマイナー度、もうよくわからなくなっているんですが…。
中高時代からの友人間には9割以上、有栖川有栖の名前は知られていると思うのですが、それは友人の読書傾向が偏っていたせいであり…
「ミステリすきだよ。よく読むよ」って言ってたバレエ関係の知人に、
「誰、読むんですかー?」って言ったら
「赤川次郎とか山村美紗とか西村京太郎」って言われて、すっごく驚いた(というか、4コママンガのようにずっこけた)ことがあるんですが…
でも、よく考えたら、この3名すごくたくさん本出してるわけで、ってことはすごく売れてるってわけで…
でも、もうこの人に自分がすきなミステリ作家をあげても「ふーん。知らないな~」で終わるよな、と思って、このときも自分は誰を読むのか、答えを濁したような事を思い出しました。
(あ、この3名、一応、何作か読んでいます。全然バカにはしておりません。)
「ふーん。知らないな~」って言われるのがそんなにイヤか?ワシ?
大体どんなことでも子どもの頃から少数派だろ? もう、人と違ってることくらい慣れたろ?
どんな事でも全員同じなんてことはないんだし、有栖川さんだって、多分それなりに売れてて長年専業作家なんだし、大体ミステリの賞だってイロイロとってるじゃーないか。
自分が好きなミステリジャンルの中ではかなりメジャーだぞ!
いや、そもそも「ざっくりと本格ミステリ」な時点で世間でマイナーなんだと思うけど。
っていうか、もう、小説読むだけでも世間でマイナーな方なんじゃないの?
そうだよ、バレエの友達ら(20~30代)で稽古帰りのマックで話してたときわかったじゃん。
みんな、「仕事以外では、雑誌以外に文字読まない。雑誌の文字も興味あるところだけざっとみる程度」って言って頷きあっていましたよ。
世の中、本が売れないって随分前から聞きますしね。
ま、同じバレエ教室で一番仲良くしていたコはそのときのマックにはいなくって、一番仲良しのコは、自分と同じかそれ以上に本をよく読むし、そのコがすきそうな本をよく貸したりして喜ばれたりしたりするわけなんですが…
でも、やっぱり「えーーーっ。なんでそんなに本読むの?お勉強すきだから?私たちとは人種がちがうわー」って感じの目でみつめられるのは、そんなに気分がよくないものだと当時思ったものでした。つーか、お勉強云々とミステリ関係ないだろう…。
とにかく、「ふーん。知らない」って言われるのは、ちょっと寂しいので、答えを口ごもってしまったのかも。
3.有栖川有栖…一部で「キャラ萌えで読んでます」というファンもいるからか。
これか? これなのか?
いや、キャラ萌えで本を読む人を私は否定しません。
すきな本やマンガには、いろいろひっくるめてすきな要素があるわけで、キャラにも萌えていることも多かろう、ワシも。
そもそも、今回買った有栖川さんのシリーズは、「舞台設定がミステリずきのツボをやたらとついてくる」という点と「主人公の人間性がすきだ」という点、同じくらいひかれている要素…。
え? 自分が「キャラ萌え」含めてそのシリーズがすきなくせに「キャラ萌えで読んでいる」とは思われたくない、ということなのか?
えーーーーーっ。
いやいや、やっぱりキャラ萌えだけでは読めませんよ。本もマンガも。
このシリーズのいいところはですね…
と、長々と解説したくなっちゃうところが面倒くさいな、と思ったのかもしれません。
そう、多分、相手が有栖川有栖を知らない場合は、なんだか寂しく思い、知っていた場合も、「でも私はこういうところがすきなのだー」と非常に長ったらしい説明を一方的にしないではいられない…が、そんな解説このコは求めてないんじゃないかな?って思ったのです。
最初に「買ったんだー」って言った心を開いている相手には、有栖川さんの作品のどこがすきなのかということを延々と語ったことがあります。
相手はミステリ読みではなくSF読みだけれど、まあとにかく小説を好んで読む人間なので、私のミステリに関するグダグダした意見もそれなりに興味をもって聞いてくれる人なので。
いや、片付けしながら「誰ですか~?」って、聞いてくれたコも、話せば興味を持って聞いてくれた可能性は0ではありません。なんでも一方的に決め付けるのはよくない、という意見もありましょう。
でも、やっぱり、そのコはそんなには私のダラダラにクドイ説明は歓迎しなかったんじゃないかなー、今まで20回くらいは10人前後で一緒に呑み食いしてトークした結果からの推察で。
だから、まあよいとしよう。
そもそも、ものすごくどうでもよいことだ。
この些細な会話について、ずっと頭の片隅に残しちゃって、ボンヤリと考えをこねくりまわしてしまう自分を、ちょっと(いや、かなりか?)面倒くさいヤツだなぁと思うのであります。